【テレビの音が大音量】
夏休みや連休で実家に戻ると、実家のテレビが大音量で驚くことがありませんか・・・なぜこんなに大きな音で?もしかしたら親の耳が聞こえにくくなっているのではないだろうか?と不安に思います。ブラウン管の時代に比べ画面が薄くなった分、スピーカーを内蔵するスペースが減ったとの説がありますので、音量は少なくなっているのでしょうか。いずれにしても私には大きく聞こえました。それからまもなくして、ニッポン放送の番組でまさにその話がでました。ニッポン放送の『あなたとハッピー』(月~金 朝8時~)のパーソナリティーを務める垣花正さんは突発性難聴を発症し、片耳だけしか聞こえません。そのため家でテレビの音が聞こえにくいというのです。そこで対策として自分の手元に置くことができるテレビ用のスピーカーを購入したと話題にしていました。
【理解に必要な条件は音】
これがかなりの優れもの。信じられないほどクリアな音が耳に入ってくるようになり、これまでの不便さがうそのようだと言うのです。さらに、会話のみならずコップをテーブルに置く音や紙をめくる音など、これまで気にもしなかった音が聞こえてくるようになりそのクリアさは想像以上だと。まさに耳からうろこ。すべての音が聞こえると、ドラマにしても、お笑いにしても番組内容の理解度を上げるとおっしゃっていました。私たちはコロナ禍をきっかけにオンラインでのコミュニケーションを当たり前にしています。実際に会わなくても、相手の顔みて話せるのですから便利この上ないですよね。あっという間に世の中に広がりました。ただ、それなりに不都合もあり、通信環境が悪いと画面が固まってしまったり、生活音が聞こえないと反応がわからなかったりと不便さも認識しています。物が見えていても音が聞こえないのは違和感を感じます。オンラインで相手が見えていても話が聞こえない・・・というダメージは何にもまして深刻度が高いのです。
【話を理解できない理由】
聞こえないには様々な理由があります。一つは日本語の特徴、2つめは声の出し方、3つめは言葉の明瞭さです。日本語は最後まで聞かないと内容を理解することが出来ません。例えば“私はりんごが好き・・・“という場合、好きのあとの単語が何かで内容が決まります。「です」で肯定するか「ではありません」で否定するかです。最後を聞き逃すと全く違う内容になります。英語は I like… or I do not like…ですから最初が聞こえればわかりますが、日本語は逆の順番です。そのことは声の出し方と密接に関係します。言葉を発している時には息を吐き出していますので、たくさん息を吸っておかないと苦しくなってしまいます。あまり吐き出す息が残っていないと小さい音で言葉を発するため相手に聞こえないという現象につながります。「何を言っているのかよくわからないよね」という感想を持たれてしまう場合、このように文章の最後まではっきりと聞こえないことが要因になっていることもあります。ですから呼吸の仕方を練習していただくことが効果的です。肺活量が多そうな男性でも緊張感からたくさん息を吸えないこともあるので気を付けたいところです。
【聞かせる努力を惜しまない】
3つめの言葉の明瞭さは私たち専門家の言う「活舌」です。「わたし」ではなく「わらしは」ですとか、「日比谷」ではなく「しびや」、あるいは「それを取って」が「皿をとって」と聞こえるなどはありえそうな間違いです。年齢とともに筋力が衰え、口が回らなくなってしまうのは避けられません。日ごろから口をしっかり開けて言葉を発する努力はしたいものです。私は活舌練習と顔の筋力トレーニングをするようにしています。聞こえないのは相手のせいではなく、聞かせてあげられるようこちらが努力することだと思います。呼吸のトレーニングも大切です。声を出すための呼吸も衰える機能です。パソコン作業や携帯ばかり見ていると姿勢によって肺が押しつぶされます。肩を開いて前かがみにならないように気を付けましょう。たくさん息を吸うことで言葉を発する、話すことは声帯を鍛えることにもつながりますので理にかなっています。
【自分が変われば聞こえます】
ここまでで「あれ?」と思われた方もいるかもしれません。聞こえないのは「相手」です。「自分」は聞こえています。だから大丈夫だと思ってしまいがちです。つまりコミュニケーションの齟齬における最大のポイントは「相手が聞こえていない」点なのです。自分には聞こえているので相手にも聞こえているはずと思ってしまうのです。ですから言葉を発するこちら側が聞こえるよう、理解できるよう話す必要があります。相手がわかっているのか反応を確かめたり、理解できるようゆっくり話したり、大事なところは繰り返したり。陥りがちなのは時間がないのに伝える量がたくさんある時です。とにかく全部アウトプットしなければ!ではなく、相手に合わせて話を進めることが「理解」につながることを忘れないでいただきたいと思います。自分本位で話を進めないよう気を付けるのです。内容は重要度の高い順番に並べる、短文やポイントに整理するなど準備することはたくさんあります。自分が変われば相手にも必ず聞こえます。 (了)
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