話し方は人生を映す あの日の彼女と25年後の私

【ライバル局の彼女との縁】

どのようにして彼女と仲良くなったのか全く覚えていない。
当時は同じ県内に2つ以上のテレビ局がある場合、たいてい「ライバル局」と言われていた。
私と彼女はそれぞれ、日本テレビ系列とTBS系列の地方局に所属するアナウンサーだった。全く接点はない。
敢えて言うなら同期入社に女性アナウンサーがおらず、                                                隣の局に同じ年の女子アナがいた。あるいは取材先、イベント先で接点があって仲良くなった…のだろうか?

ご存じの方もいるだろうが地方局は、東京に本社のあるテレビ局の傘下にありネットワークを結んでいる。
つまり日本テレビの系列局は独占的に、キー局である日本テレビの番組を放送することができ、
TBSの系列局はTBSの番組を放送する。というお約束である。
これにより地方局はキー局からネットワーク電波料と称して補助金をもらっている。                                   ネットワークにより地方局はキー局に支えていただいているのである。

また、当時はさらにめんどうくさいシステムなのだが、
地方局はラジオとテレビの両方放送するラテ兼営の局が存在していた。
テレビは日本テレビ系列、ラジオはTBSをメインにしてニッポン放送などともクロスネットしていた。
一方、彼女の会社はテレビ単営局のためラジオはもっていない。
つまりラテ兼営局は、企業としても古く伝統と格式をもち、県内でも指折りの(中小)有名企業だった。
そのことを彼女は今でも、「伝統があって、ラジオもある企業で働くあなたをうらやましく思っていた」と。

【誰もが知る有名アナウンサー】

しかし…いえいえ、そんなことはない。彼女は1年生のアナウンサーだったが、
とにかく抜群に安定したアナウンスメントを持ち、天真爛漫な愛されキャラだった。
もちろん美人でスタイルもよく、センスも抜群によかった。
入社後すぐに帯番組(月~金曜日に放送)の情報番組に出演し、
あっという間に知名度があがって有名アナウンサーになった。                                             私は入社後1年ほどで彼女と仲良くなり、よく飲みにも行ったし、旅行もした。                                      一緒に撮った当時の写真がたくさん残っている。                                                   今見返すと、フォトジェニックな彼女と比較して、どんくさい田舎者のイメージの私がそこに映っている。

有名人となった彼女の面白エピソードがある。                                                    彼女が夕方、タクシーを拾おうと道端で手を挙げたが、実車中のタクシーは彼女の前を素通りした。                               しかし、50メートルほど先で急に停まりバックで戻ってくると、
ちょっと盛った話かもしれないけれど、それほどに有名だったことを象徴する話としてよく覚えている。

彼女を一躍有名にしたバラエティ番組がある。                                                    訛っていることを誇りにしようというコンセプトで作られた番組だ。                                          方言を魅力として扱ったもので、視聴者からの支持が高くちょっとしたブームになった。
標準語を方言に直してクイズにしたり、方言で視聴者に語らせたり、今ではめずらしくないが
テレビで方言丸出しを普通にやっており、視聴者参加型であったことを覚えている。

【ふたつのキャリアが育てた話し方】

先日何年かぶりに彼女と偶然会うことが出来た。
もちろんお互いに地方局をやめてからも、何度か会う機会はあったのだが、
だんだん距離が離れてしまい、ゆっくりと話す機会は25,26年ぶりだったかもしれない。

当初は声を聴いてもわからないぐらい、声の質が年齢と共に成長していたけれど、
相変わらず活舌がはっきりしていて、クリアな発音、安定した語り口、
そして、相手に寄り添って話を聞く、インタビューの力に感動した。

同じように、彼女は私に、
「独特の地声とアルトの声質は変わらないね」と言っていた。
しかし、私が感動した“インタビューの力”とはポイントが違う。
私は何か特徴があるだろうか?それは強みとなっているだろうか?と。

両社の話し方を改めて比較してみた。                                                        私は報道分野に長く、知的な声や正確性、また安定感が必要とされる世界にいるため、
話し方を「動」と「静」と二極に分けるとしたら「動」に属する。
また、敢えて言うなら戦闘的と表現できるかもしれない。

例えば「なぜそうなったのか」と原因を究明する、
端的に説明するために「簡潔に整理してもらえますか」と言う。
さらには「今後どうしたらよいと思いますか」と、すぐに未来に向かって話を進めようとする。

一方、彼女は親しみやすさややわらかさ、暖かさなど、
例えば「それは大変ですね、背景を一緒にたどってみましょう」
「大事なところは短くまとめてもらうと助かります」
「次の一歩をどう踏み出すか、相談させてください」などと県民の声を聴いてきた経験値から表現するのだ。

【25年ぶりの再会での気づき】

話す相手が違うとこのような違いが出る。つまり、ビジネスライクには簡潔で感情抜きの話し方、
友人・家族には共感するような感情をベースにした話し方である。
双方に、どちらが良くてどちらかがNGというものではないだろう。おそらく業界の常識にも左右される。

ただ、一般的には人はどちらかの話し方しか表現できない。どちらか一方で通用してきた歴史がある。
しかし、社会人になれば多くの業界の人たちと出会い、話す機会があり、自分が人と違うことを感じたりするものだ。
自分の足りない部分に気づいた人は、「なぜ自分の話し方では人に伝えることができないのか」
「伝えたことで相手を動かすことができないのか」と悩むのだと思う。
そこで私は思う。状況や相手によって話し方を変えたり、言葉を言い換えることができたら、
もっとコミュニケションが豊かになるのではないかと。
自分の話し方を変えれば、相手の反応も変わる。
自分の行動変容から学びが多くあることを私は経験してきた。
今回は話すことを生業(なりわい)にしてきたからこそ気づいた点を記した。
このような気づきを今後もNoteで伝えて行きたいと思っている。 (了)

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